No.004
癌
- 生の本質構造と刹那的体験 -
哲学者大和の現代アート作家初個展
ギャラリー白
日本で初最先端の「オムニアート」を実践する初の試み
期間 2016年6月27日(月曜日)から 7月2日(土曜日)まで
時間 11時から 19時まで 土曜日の最終日は17時まで
場所 ギャラリー白 3
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F
TEL/FAX 06-6363-0493
Mail art@galleryhaku.com
JR大阪駅/地下鉄梅田駅より約15分
京阪/地下鉄淀屋橋駅1番出口より約10分
地下鉄南森町駅2番出口より約10分
京阪なにわ橋駅1番出口より約5分
主催 総合芸術企業マクロマティック(machromatic)
協賛 狭山美学校 美学者母
(哲学者大和個展事務局)
問い合わせ
090-7100-5712
double.mint.0120@gmail
哲学者大和からのお別れの挨拶
この度はわたくし大和尚子の告別式ならびに展覧会へ
ご参列いただき誠にありがとうございます。
生前、わたくしは看護師として医療に従事してまいりました。
医療現場では人間の死に携わらせていただきながらも、
死んで逝くのは常に他人であることから、
自分が死ぬということに対して誰よりも鈍感になっておりました。
自分の死を考えることはなぜだか怖いです。
経験したことがないからわからないはずなのに。
そんな鈍感な看護師であったわたくしは、多くの癌患者さん達と出会います。
様々な要因で病院を訪れる方、亡くなって逝く方を
看させていただいたにもかかわらず
わたくしは癌を特別視している歪んだ自分の考えに気づきました。
癌と死を直結させてしまっていたのですね。
その様な視線を 癌患者さんへ向け、
自分の死を、すなわち生を感じようともせず
傲慢に過ごしてきたわたくしこそが
生ける屍であり、社会にとっての癌であったのです。
その事に気づいた途端に、わたくしにもまた死ぬ瞬間が訪れてまいりました。
享年34歳 大和尚子
病院への出勤の時刻となりました。
「癌 -生の本質構造と刹那的体験-」個展への思い
人体は莫大な数の細胞からなっており、成人では約60兆個といわれています。ヒトの発生の初めは1個の細胞(受精卵)ですが、細胞は急速に増殖し、新生児では約3兆個に達し、成人になれば約60兆個の細胞を持つようになります。
このように成長・発達において細胞はいちじるしく増殖しますが、体内では常に多数の細胞が死に、新しい細胞によって補われ更新されています。
この常に多数の細胞が死に更新されることは、あらかじめ遺伝子にプログラムされており、細胞死(アポトーシス)とよばれています。
私は学生時代に、このアポトーシスという概念、またそれが予めプログラムされていることと知った時、なぜかとても興奮した記憶があります。
当時、まだその興奮がどこからやってきたのかわからないままでしたが、
今考えるに、人間は細胞レベルで刹那に生死を体験しているのだということが無意識にわかったからなのではないかと思っています。
さて、この展覧会のタイトルにもある癌について
私は、癌は死を想起させるものとして、当初、この展覧会を企画しました。
たしかに癌は境界なく臓器に広がり、遠隔に転移する特徴があり
この特徴により生体はホメオスタシスといった動的平行を失い、様々な臓器、免疫不全に陥り死に至ることもあります。
しかし、展覧会へ向けて準備を進めるにつれ、企画当初抱いていた癌の捉え方は熟考できていないのではないかと感じるようになりました。
患者さんと関わらせていただいた経験を振り返り、また余命宣告された方の闘病ブログを拝見して、癌は死を想起させるものである以上に
刹那における生の貴重さを感じさせるものであり、生の本質に迫るものではないかとの考えに至りました。
癌と死を直結させる考えは、あまりに安直で考えと呼ぶに足りない稚拙なものであり、その様な稚拙さは社会にとっての癌そのものであると自覚します。
生あるものの肉体はいずれ生命活動を終え物理的な死を迎えます。
しかし生まれてから死ぬまでといった直線的に流れる時間という概念を一旦取り払ってみれば、生の本質は刹那的な体験においてしかないと捉えることができると思います。
わたくしはこの展覧会において、
ご来場いただいた方々にそれぞれの生を感じていただければ幸いに思います。
哲学者大和
2016年6月15日
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