プロジェクト

デリバティブアート

Derivative Art

価値と意味の派生構造から芸術を問い直す

概要

デリバティブアートは、作品の価値や意味が対象そのものに内在するのではなく、参照、評価、制度、交換、言語、他者との関係を通じて派生的に生成されることを検討するプロジェクトである。芸術作品を固定された実体としてではなく、複数の関係や参照によって成立する生成的な構造として捉える。

本文

デリバティブアートは、2018年に開始されたプロジェクトである。その中心にあるのは、芸術作品の価値や意味が、作品そのものの内部に固定的に存在しているのかという問いである。
金融におけるデリバティブは、原資産そのものではなく、その価格や関係を基礎として価値が派生する構造を持つ。デリバティブアートは、この派生という構造を芸術の問題へ接続し、作品の価値、意味、評価、所有、展示、制度が、対象そのものだけではなく、それを取り巻く複数の関係から生成されることを検討する。
作品は、物として存在するだけでは芸術作品として完結しない。誰が制作したのか、どこで展示されるのか、誰が評価するのか、どのような言葉で説明されるのか、どのような制度や市場のなかに位置づけられるのかによって、その意味や価値は変化する。したがって、作品性は対象の内側に閉じた属性ではなく、対象とその外部との接続によって成立する派生的な構造として捉えられる。
ここで重要なのは、デリバティブを単なる経済的比喩として用いることではない。派生とは、ある対象が自己完結せず、他の対象、言語、制度、評価、履歴との関係によってその存在の仕方を変化させる構造そのものである。芸術はこの派生構造を強く可視化する領域の一つである。
この問題意識は、後の言語デリバティブ論へと展開する。言葉もまた、対象を完全に直接指示するのではなく、既存の意味、文脈、差異、引用、解釈を参照しながら新たな意味を派生させる。作品と同様に、言語もまた関係の網の目のなかで価値と意味を生成する。
後の生成学から見れば、デリバティブアートは、存在、価値、意味を固定された実体から切り離し、関係と接続によって生成されるものとして捉える重要な転換点に位置する。作品を一つの完成物として扱うのではなく、その外部に広がる参照関係そのものを作品の生成条件として捉えることが、このプロジェクトの核心である。

Keywords

デリバティブアート;派生;価値;意味;参照;評価;制度;交換;言語;作品性;生成